ピッチャー経験のある選手は、テイクバックのときに肘が下がってしまい、1度は「肘を上げろ」とアドバイスされたことはないでしょうか?
こういうときに、肘を上げようと意識をするだけではなかなか肘の位置は変わりません。大切なことは、身体の構造を知り、スムーズに腕が上がるように身体を使うことです。
そうすれば、テイクバック時に下がっていた肘も上がり、スムーズな投球動を行うことができます。
この記事では、
- テイクバック時に肘が下がる原因
- 肘をスムーズに上げる方法
などをパーソナルトレーナー歴11年の僕がお伝えします。
今回のテーマは、1回ですぐに変化する内容でもあるので、ぜひ参考に実践してみてください。
今回の記事の内容
ピッチャーがテイクバック時に肘が下がる原因
ピッチャーがテイクバックのときに肘が下がる原因は、
- 胸を張る・肩甲骨を寄せる意識がある
- 肘を内側に捻っている
- 柔軟性の問題もある
などが考えられます。
最初に肩関節の構造を知ってもらうと理解しやすいので、まずは肩の構造から解説しますね。
肩関節の構造
肩の関節というのは、上腕骨と肩甲骨などの骨によって関節が作られていますが、肩甲骨を天井側から覗いてみるとこのように前側に約35度傾いています。
これが非常に重要で、この前側35度の方向に腕が上がることが自然というわけです。
ただ、腕を横側から上げようと思うと、こういう上げ方をしませんか?
自然な角度というのは、この辺りになるんですね。これは実際やってもらうと、後者の方が明らかに腕がスムーズに上がるのがわかると思います。
そして、あわせて試してほしいのが、頭上まで腕を上げるということ。おそらく、以下の違いがわかると思います。
- 真横から腕を上げる=肩周りが力み、腕が上がらない
- 35度方向から腕を上げる=スムーズに腕が上がり、頭上で手が合わさる
ここからわかることは、
テイクバック時に腕を真横、背中側から上げようと思うと関節の構造上上がらず、肘が下がる
ということです。
最初に肩関節の構造について知っていただきましたが、これを踏まえて以下のことを見ていくと、さらにテイクバック時に肘が下がる原因が見えてくると思います。
ここからより具体的に原因を見ていきますね。
胸を張る・肩甲骨を寄せる意識がある
これも現場でよくあるアドバイスの1つだと思いますが、「胸を張れ」「肩甲骨を寄せて…」と指導されたことはありませんか?
ピッチャーだけに限らず、野球選手が投球時に、
- 胸を張る
- 肩甲骨を寄せる
などの意識があると、この意識そのものが肘が上がらない原因の1つとなってしまいます。
これは、先ほど解説した肩関節の位置が問題になってきます。
実際に、胸を張って投球動作を行おうとすると、以下のようになりますよね?
胸を張ろうとしたり、肩甲骨を寄せる意識を持つと必ず肩が後方に引っ張られてしまう。
そうすると、先ほどお伝えした前方35度の位置で腕が上がらず、背中側から腕を上げることになります。
実際行ってもらうとわかりますが、「胸を張る」などの意識を持てば、必ず肘は下がる。
- 胸を張る
- 肩甲骨を寄せる
こういう意識を持ってテイクバックをとろうとしている場合、この意識そのものが肘が下がる原因として考えられます。
肘を内側に捻っている
また、似たようなことでテイクバックのときに「腕を内側に捻れ」という指導がされることもありますよね。
こういう動作を意識して行っている場合も肘が下がります。これも関節の構造が関係していますが、実際に以下のことを試してみてください。
- 親指を天井に向けた状態で腕を頭上に上げようとする
- 小指を天井に向けるように、腕を内側に捻った状態で腕を頭上に上げようとする
動作のイメージはこのような感じです。
明らかに腕を内側に捻って、小指側から上げた方が腕は上がらないですよね?
ですので、投球時に腕を内側に捻る意識を持ってしまうこと、実際にこの動作を行ってしまうと肘の位置は下がってしまう。
こういう動作を指導する指導者の方も、「少しでもうまくなってほしい」という想いだと思いますが、関節の構造を考えるとこれも肘が上がらない原因の1つです。
柔軟性の問題もある
指導者からアドバイスを受けたこと、自分で意識して身体を動かそうとしていることが原因で腕が上がらないということもありますが、柔軟性の問題もあります。
肩の動きは、
- 肩甲上腕関節(一般的に「肩」と言われる関節)
- 肩甲胸郭関節(肩甲骨と肋骨の関節)
- 肩鎖関節(肩甲骨と鎖骨の関節)
- 胸鎖関節(胸の骨と鎖骨の関節)
こういったいろんな関節が関係して身体が動きますが、これらに関係する筋肉が硬いとそれぞれの関節の動きが悪くなり、結果肘が下がってしまいます。
日頃、
- 練習後
- トレーニング後
などに、筋肉を緩めたり、クールダウンを適切に行っていますか?どうしても疲れたらサボってしまうこともありますよね。
ただ、そういう毎日を過ごしていると肩周りの筋肉が硬くなってしまう。そして、肩の柔軟性が低下してテイクバック時に肘が下がってしまうわけです。
ここまでお伝えした内容を整理すると、ピッチャーがテイクバックのときに肘が下がる原因は、大きく分けて2つ。
- 動き、動作のまずさ
- 柔軟性の問題(筋肉の硬さ)
が考えられ、これらを改善することで肘がスムーズに上がるようになります。
では、テイクバックのときに肘が下がらないようにするためには、どうすればいいのでしょうか?
テイクバック時にスムーズに肘を上げる方法
以下の流れに沿って行ってもらうと、スムーズに肘が上がってくるのでぜひ試してみてください。
まずは柔軟性の改善から行っていきますね。
肩周りの柔軟性を高める
肩周りの柔軟性を高めるためには、以下の5つを行っていきます。
①腕を前後に動かす
手順
- 立った状態で、両腕をみぞおちの高さに上げる
- 手のひらを天井に向け、腕を落とすイメージで肘を曲げて後方に引く
- この反動でスタートポジションに戻り、振り子のように腕を前後に動かす
- これを30回行う
②肩甲骨を内・外に動かす
手順
- 身体の前側で手の甲と甲を合わせる
- このとき、胸元にしわを寄せるように少し丸くなる
- ここから腕を外側に捻りながら胸を軽く突き出す
- このときは肩甲骨を軽く寄せるイメージ
- 肩甲骨を外側に離したり、内側に寄せたりを繰り返す
- これを30回行う
③腕を上下に動かす
手順
- 耳の高さで棒を持つようなイメージで腕を少し上げる
- その棒を肩よりも少し下げるようなイメージで腕を上下に動かす
- リラックスしたこの上下運動を50回行う
④腕回し
手順
- 脚を肩幅に開き、肩から腕をぶらんと垂らしてリラックスさせる
- 身体の前側で円を描くように、腕を回す
- このとき、膝の屈伸で勢いをつけるように腕を回す
- 同じ方向へ20回、逆回し20回行う
⑤腕を内外旋させる
手順
- 仰向けの状態で、腕を45度ぐらい開く
- 肘を90度ぐらい曲げる
- この状態で、肘を支点に前腕を内・外側に倒す
- これを1分間リラックスして行う
この5つすべてに共通することは、できるだけリラックスした状態で気持ち良く数をこなすということです。
まずは肩周りの筋肉を緩めていきましたが、この後実際に投球動作を行えば肩周りが動かしやすくなっていることを感じれると思います。
そして次に、スムーズな投球動作を身体にインプットしていきます。
肩回し → 一本背負い
次は腕回しからそのまま投球動作に移っていきますが、できるだけリラックスして繰り返します。イメージは、こんな感じです。
手順
- 立った状態で身体の前で円を描くように腕を回す
- スムーズな動きを確認したら後頭部の後ろに手を落とす
- そのまま一本背負いをするように投球動作を行う
感覚としては、腕回しから一本背負いをするようなイメージで投球動作を繰り返します。
これをリラックスして続けられると、専門的な柔軟性の向上となるので、キャッチボール前に行うとスムーズな動作がしやすくなります。
キャッチボールのやり方も重要ですが、詳しくは「パフォーマンスが変わる基本的なキャッチボールの投げ方と5つの手順」で解説しています。
ここまでできると肘はスムーズに上がる
上記の手順を繰り返し行うことで、腕のスムーズな動きはインプットされ、そのまま投球動作に入っていけばテイクバックのときに肘はスムーズに上がるはず。
ここでのポイントは、特に何も考えず、リラックスすること。
それさえできていれば、肘が下がらず自然に肩の高さぐらいまでスッと上がってくるので、これでOKですね。
肘の位置は肩の高さでOK
あと、肘を上げる高さですが、基本的には肩と同じ高さまで肘が上がればいいと考えています。
これはサッカーボールなど、少し大きめのボールを投げるとより理解しやすくなります。
- 肩の位置よりも肘が下がる=肘への負担が増す
- 肩の位置よりも肘が上がる=肩への負担が増す
という違いが生まれ、肩と同じ高さでボールを投げると、負担なくスムーズに投げられることがわかると思います。
こういった肩肘への負担のかかり方から考えると、肘の高さは肩と同じ高さまで上がればOKですね。
投球動作については、以下の記事でも詳しく解説しているのでよければご覧ください。
ピッチャーがテイクバック時に肘が下がる原因と改善方法のまとめ
今回は、ピッチャーがテイクバック時に肘が下がる原因と改善方法を解説しました。
今回の記事の内容
- 肩甲骨を前方35度の位置についている
- 真横から腕を上げると、肘の位置は下がる
- 胸を張る、肩甲骨を寄せるなどの意識をしても肘の位置は上がらない
- 柔軟性が低い場合も、肘が上がらない
- 改善のためには、柔軟性を高める+動作を改善する
- この2つができると、テイクバック時の肘の位置は上がる
こういった内容をお伝えしていきました。
今回の内容が少しでも参考になればうれしく思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
この記事へのコメントはありません。